【インタビュー:事例紹介】 待機児童/職場復帰の不安

働く女性の実態を知るために、数多くの女性のインタビューをしてきました。
課題の本質は数字(定量的データ)のみに現れるのではなく、個別の事例を掘り下げることによって見えてくるものもあります(定量的データを否定するものではありません)。

資料としては少し古くなりましたが問題の本質は変わらないであろう事例をここに掲載します。
保育園に入れるかどうかの不安、職場復帰への不安を吐露するインタビュイーの声を、多くの働く方に知ってもらいたいと思います。

まずはインタビュイーに心を寄せて読んでいただけますようお願いします。



インタビュー時期:2014年2月
インタビュイー:28歳 食品メーカー勤務 (第一子育児休暇中)
※なお、以下はインタビューを元に本人語りの形式に加工。プライバシー保護の観点から本人の了解の元、一部加工しているが,
語った言葉・内容は変更を加えていない。

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将来の夢は特になかった。社会学部を選んだのも社会全体を学ぶ中で自分の夢や将来像が見つかればよいと考えたからだ。母親が介護福祉士として働いていたから、ということもあり、社会福祉士のコースをとった。通常の学部の授業以上の単位数が求められて大変だったが充実していた。実習で訪れた老人ホームでの高齢者の方々は皆さん優しく、祖父母を早くに亡くしている私には居心地の良い場所だった。もちろん、二週間程度の短期実習ではわからない大変なことはもっともっとあることは容易に想像がつく。しかし、接するお年寄りは自分には可愛らしく思え、過ごす時間は楽しかった。
 
学生の頃は、社会福祉コースで知り合った10人程の友人といつも一緒だった。おしゃべりをしたり、お昼ご飯を食べたり、遊びに行ったり。その中の4人とは、今でも頻繁に連絡を取り合っている。特にサークルには属さなかった私には彼女たちと過ごした時間が学生時代の大切な思い出だ。
 
いずれ母のように福祉の仕事をしたいと思っている。しかし、就職先として福祉は選ばなかった。
 
就職の際に考えたのは、「家族の幸せに関わりたい」ということだった。住宅展示場の受付のアルバイトをしていた時、自分たちの幸せの形を探して見学にいらっしゃるお客様を見ていてそう思った。仲の良い実家の家族の温かさを大切に思っていたこともあるだろう。そんな家族の幸せは、食卓を皆で囲むことによって実感していたように思う。家庭用食品のメーカーを選んだのは、そんな理由からだった。
 
同期入社は28人。そのうち女性は15人。配属先は東京本社で、量販店を担当する営業だった。数ある営業部門の中でも主力となる課だ。自分たちの課では、5人一組のチームで動く。女性は私一人だ。精肉、鮮魚、青果にそれぞれに合わせた商品を売り込みに行く。そのチームで営業のいろはを教えられた。

仕事は面白かったし、商品の品質には100%の自信がある。お取引先のマネージャーや発注係、クッキングサポート(試食販売でお客様に商品を売り込んでくださる係)の方々とコミュニケーションをとり、信頼関係を作っていく。その中で特に私に求められていたのは、チーム内の女性としてクッキングサポート(ほぼ女性)の方にメニュー提案をしていくことだった。

もともと料理は好きだった。高校時代から付き合っていた現在の夫には、当時からお弁当を作ってあげていたし、家族みんなでおいしいご飯を食べるのも好きだった。その時のトレンドを調べ、旬の食材と弊社の商品を使ってメニューを考案する。自分のメニュー提案がお客様に受けて、ある店舗において3日間で700個の商品が売れたのをきっかけに全チェーン店舗の発注拡大につながったことがある。都内有数の規模を誇るそのスーパーマッケットで発注をしてもらえた時の喜びと感動は今でも忘れられない。

「自分のやっていることが認められた、そして会社に貢献できた。」

その実感が私の仕事のやりがいだ。
 
もちろん、仕事は楽しいばかりではない。自分はお客様とは個人的なお付き合いはしないし、したこともないのに、ある店舗であらぬ噂を立てられたことがある。マネージャーの方からその噂を確かめられた時には、唖然として、そして涙あふれてしまった。そんな目で私は見られていたのか、と思うと心が折れた。自然とそのマネージャーが居ない時に店舗周りをすることが多くなった。店舗の方たちは、「あなたはそんなことをする人じゃないのは皆わかっているから」、と言ってくれたし、同じ営業チーム内でもリーダーからその店舗は行かないで良い、と言ってもらった。つくづく、人に恵まれていると思う。悔しい思いとともに、支えてくださった方々への感謝の気持ちでいっぱいだ。
 
営業を2年した後で販売促進企画室へと異動(24歳)。10名で、ひとつの部門のpop作製、メニュー開発から営業データの処理、什器の考案まで行う。全国の営業所から集まった400名の前でプレゼンテーションすることもあれば営業から販促のための新企画を求められることもある。職場はアットホームな雰囲気で女性4人、男性6人。繁忙期は21:00過ぎまで残業することもある。

20代女性は自分のみだ。若い感性を提案することが求められていることは十分承知している。男性は皆40代以上で、私の若さにブレーキをかけるような役回りだろうか。時には、古臭いな、と思うこともあるが、今振り返るとバランスの取れた職場だったと思う。

仕事の面では、私の教育係についてくれた30代の女性の先輩社員(既婚・子どもなし)に憧れている。下からも上からも頼りにされ、会社に貢献する、という熱い思いが伝わってくる。私の足りない点もはっきり言ってくれるが嫌味がない。私も先輩のような人間になりたいと思っている。仕事も、この会社も好きだ。私は人に恵まれている。
 
25歳で結婚。夫は機械メーカーの営業だ。高校の頃からの付き合いで、信頼できる人だ。27歳で出産。現在、子供は6か月で育児休暇を取得中だ。
会社は全体で女性が二割程度しかいない。食品メーカーで女性目線が必要だということから経営陣は女性の割合を増やす、と言っているがどうだろうか。同期の女性のうち結婚や人間関係の悩み等から既に6人が辞めている。会社にも知る限りでは、既婚で子供をもちながら働いている女性は5人もいない。

名古屋営業所に転勤になった同期は、地方ではまだまだ営業が女というのは厳しいとこぼしている。私が仕事仲間や上司に恵まれている、というと、そんな場所ばかりではないよ、とやんわりと言われたこともある。時々、男性社員・上司の方々が女性をどう扱ってよいのか、どう育てたらよいのか戸惑っているな、と感じることがある。セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメントという言葉がひとり歩きしているのが原因だろうか。
 
出産する前は、育休後はすぐに復帰してバリバリ働くものと考えて疑わなかった。大好きな仕事だ。会社には自分を生かす場所がある。

しかし、子供を見ていると少しその気が弱まってきた。
0歳児クラスから保育に入れた場合、2週間以内に仕事に復帰しなければならない。1歳児クラスから申し込んでもほとんど入園することは無理だ。うちの会社では、認可保育園に入れなければ育児休暇を1歳半まで延長できる。しかし、そこまで延長したら、なぜ0歳児クラスから入れないのか、と職場で思われるのではないだろうか。そう思うと自分だけ子供とぬくぬくと暮らしているようで悪いような気がしてくるし、後ろめたく感じる。
一方で、子供の成長を間近で見ていたい、という気持ちがとても強くある。こうやって話しているだけで何故か涙がこぼれてしまう。この子が日々成長していく過程に立ち会いたい。自分で作ったご飯を食べさせたい。人に預けて、人の作ったご飯を食べさせるのは嫌だ。少なくとも小学生の間までは自分の作ったご飯を食べてもらいたい。子供と離れたくない。

 
しかし、仕事を辞めるとなると漠然とした不安もある。会社も自分には大切な場所だ。もっと働きたい。戻れる場所があると思えることは、自分にはとても重要なことだと実感している。子育てだけの人生になったとき、私はそれで良いと思えるだろうか。自信がない。
 
だが、職場復帰して本当に良いのだろうか。時短労働で3歳までは16時に帰れるが、仕事量の調整をしてもらい、自分の(子供の)都合で周囲を振り回すことになるのではないだろうか。家庭を大切にしながら仕事の責任を果たせるのか。それならいっそのこと辞めた方が迷惑もかからず、自分も気まずい思いをせずに良いのではないだろうか。職場に子供のいる女性がいるが、何度か子供の都合で振り回されたことがある。同じことを自分もするのだ。子供をもって働いている女性は会社には極端に少ない。周囲は理解してくれるのだろうか。皆、どう思うのだろうか。
 
0歳児クラスの申し込みはした。考える時間はあと少しだ。
カギっ子だったという同期の女性が、「大丈夫だよ。私は寂しくなかったよ」と言っていた。本当に寂しくないだろうか。母親がいつも家にいた私には想像もつかない。

考え始めると、いつまでも同じ場所をぐるぐる回ってしまう。まるで自分の尻尾を追い掛け回す犬のようだ。どこで決断したら良いのかわからない。夫は好きな道を選んで良い、協力するからと言ってくれている。
夫は、私が出産で里帰りしてから変わった。家事を本当によくやってくれる。この家庭を大事にしたい。

しかし、現実はそううまくいくのだろうか。皆、どうしているのだろう。私はどうしたら良いのだろう。自分は頑なすぎるのだろうか。欲張り過ぎているのだろうか。どんな決断をしたら良いのだろう。
 
「子育ては後悔のないようにね」
最近、義母に言われた言葉が頭の中でどんどん大きくなっていく。
                                                                                    
end

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