ワーク・ライフ・バランス(働き方改革)に取り組む際に理解していただきたいこと

 行政マネジメント研究所 2017年 5月コラムより転載

 

 

【はじめに】
 今年3月、内閣府より「男性の働き方改革・意識改革に向けた職場のワーク・ライフ・バランス推進のための取組事例集」が発表されました。ヒアリング調査対象は、以下の3つの点から選定された企業です。

従業員の働き方改革、ワーク・ライフ・バランス推進のために実施した取組の結果、
  男性従業員に生じた変化として、以下を選択している企業
  (顱飽藥・家事への参画
  (髻肪楼莖萋阿悗了臆
  (鵝鵬雜遒悗了臆
  (堯砲修梁召妊罐法璽な回答のある企業
従業員の働き方改革、ワーク・ライフ・バランス推進のために実施した取組の結果、
  男性従業員に生じた変化として、「ライフの充実を通じた業務へのフィードバック」を
  選択している事例
導入経緯に「本業へのプラスのフィードバック」を挙げている事例のうち、
  取組の結果、男性従業員に何らかのポジティブな変化が生じていると回答している事例

  参考URL : http://wwwa.cao.go.jp/wlb/research.html(内閣府ホームページ)

 

 

 

 お伺いする地方自治体でも、ワーク・ライフ・バランスの実現や、いわゆる「ゆう活」に取り組まれているとお聞きすることが多くなり、研修のご依頼も増加しています。紹介されている取組の中には、バディー制(複数担当制)、多能工化、時間外労働の見える化、時間がかかる業務プロセスを見直す場の設定、電話・メールの最終時刻の徹底等、地方自治体組織でも参考に出来る「仕組み」が多々あるように考えます。

 

 

【ワーク・ライフ・バランスの実現は、役割葛藤の解消を組織(職場)が担うこと】
 私たちは、人生においていくつかの役割を担い、年代とともに変化させています。下図は、米国のキャリア開発・教育学者・D・スーパーのライフ・キャリア・レインボーです。

 

 D・スーパーは、成長期(0〜15歳)、探索期(16〜25歳)、確立期(26〜45歳)、維持期(46〜65歳)、下降期(66歳〜)というライフステージにおいて、〇劼匹癲↓学生、M床砲魍擇靴狄諭↓せ毀院住民、タΧ反諭↓η朸者、Р板躾佑箸いμ魍笋箸修良を変えていく、としています。仕事に比重をおく時期もあれば、子育て期の家庭人のように生活に比重をおく時期もあります。介後の担い手として、年を経てから再度子どもの役割を果たす人もいます。  多くの役割を担うとき、育児(家庭人)・介護(子ども)と仕事(職業人)のように、互いに両立できない2以上の役割に悩む状態を役割葛藤といいます。 そして、役割の葛藤の解消を二者択一的に考え、判断を本人(個人)に任せてきたのが、これまでの社会・組織でした。昨今のワーク・ライフ・バランスの取組は、役割葛藤の解消を、個人の問題にせず、組織(職場)として取り組むべき問題へと移行させた点に大きな意義があります。

 

【ワーク・ライフ・バランスに関する批判的声に応えて】
 働く女性の問題に関わり、多くのインタビュー調査をしてきた私は、「活躍するか否かは個人の自由の問題だ」「ワークをとる生き方があっても良い」という批判的な声をよく聞きます。確かに、どのような働き方をするかは個人の自由であり、自己決定が尊重されるべきでしょう。私も同意します。 しかし、選択をするには、前提として選択可能性が必要です。働き方に対する個人の選択の余地が無い状態において、個人の選択の自由をいうのは背理ではないでしょうか。個人の選択をいうなら、まずは選択可能性を広げなければならないはずです。現在のワーク・ライフ・バランス政策は、仕事か生活かのどちらかしか選択できなかった状態に、仕事をしながら生活を充実させるという道をひらこうとするものです。働き方は個人の自由の問題である、という正論は、このような選択の余地を広げた後に実現するものではないでしょうか。

 

【最後に】
 女性活躍推進が政策として本格的に動き出す前、ある専業主婦の方にインタビューさせて頂いたことがあります。自分の能力をもって人に貢献する仕事に意義を認めていた彼女は、出産を機にワーク・ライフ・バランスの困難を見極め、仕事を辞めました。彼女が言った、「もう滅私奉公するような働き方をする時期は終わりました」という言葉が強く印象に残っています。仕事か生活かの二者択一を迫るのではなく、仕事と生活の調整を図る仕組み・機能が、現在の組織(職場)には求められています。

 

以上

人材・組織開発コンサルタント 後閑徹

 

 


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